植物栄養におけるホウ素の重要性
植物が吸収するホウ素の量は、窒素やカリウムのような多量要素に比べればかなり少ないのですが、その重要性を過小評価することはできません。1840年代、カール・シュプレンゲルとユストゥス・フォン・リービッヒが、今ではよく知られる「最小律」を発表して以来、必要最小限の栄養素であっても、植物生長の制限要因になりうることが認識されてきました。
ホウ素は、通常、土壌1kgあたり0.5~2.0mg/kgの濃度が必要とされます。これは、窒素などの多量要素の必要量と比べればかなり少ないのですが、植物生理におけるホウ素の役割は極めて重要です。ホウ素は、いくつかの重要なプロセスに関与しています。
ホウ素は、植物が細胞壁を形成するのを助けます。細胞壁の形成は、あらゆる生長の前提条件になります。その能力が損なわれると、植物は正常に発育しなくなり、植物体内の多くのプロセスに有害な影響を及ぼします。新しい芽や根が止まり、葉の先端は黄色から褐色になります。糖分の輸送がうまくいかず、生長する植物の部分がエネルギー不足になります。花粉管がうまく伸長しないため、受粉が不完全になり、結実しません。その結果、収量が減少し、収量と品質も低下します。
コニロンコーヒーノキにおける、ホウ素欠乏、ブラジル (写真提供 ICL)
アラビカコーヒーノキにおける、ホウ素欠乏、ブラジル (写真提供 ICL)
作物におけるホウ素欠乏の判定方法
ホウ素は、植物体中では移動しにくい栄養素です。いったんホウ素が植物組織に取り込まれると、植物の他の部分に容易に再分配されることはありません。その結果、ホウ素欠乏の症状は、通常、新し く生長した組織に最初に現れることになります。
多くの症状が類似しているため、ホウ素欠乏症と他の要素欠乏症とを見分けることは困難です。
植物におけるホウ素欠乏の一般的な症状は以下の通りです:
- 生長が阻害され歪む: 根や新梢の先端が発育不良になり、変形する。
- 葉がもろくなる: 葉が厚くなり、もろくなり、巻いたりしわが寄ったりする。
- 葉の先端が黄化: 葉の先端が黄色くなり、ひどい場合は壊死斑ができることもある。
- 開花・結実不良: 開花や結実が低下することが多く、発育した果実が変形することもある。
- 茎が空洞になったり、荒れたりする: 特にブロッコリーやカリフラワーなどの作物では、茎が空洞になったり、荒れたりすることがある。
柑橘における、ホウ素欠乏、中国 (写真提供: ICL)
ホウ素欠乏の予防方法
植物のホウ素欠乏症の予防には、いくつかの重要な方法があります。土壌の養分レベルを定期的に評価する ことが不可欠です。定期的な土壌診断は、潜在的な欠乏を早期に発見し、タイムリーな対処を可能にします。効果的な作物管理のためには、常に以下のように段階的に進めます:
- バランスのとれた施肥: ホウ素を含む肥料を、例えば他の微量栄養素と一緒に施用する。
- 土壌への有機物投入: ホウ素の可給性が向上する。
- pHレベルを管理: pH7.5を超えるアルカリ土壌ではホウ素の利用率が低下するため、最適なpHレベル(pH6.0~7.0)を維持する。
- 一貫して適切な灌水: ホウ素は、有機物が効率的に分解される湿った土壌で最も利用しやすくなる。湿りすぎたり乾燥しすぎたりすると、有機物の分解が進まず、ホウ素化合物が溶けだしにくくなる。
- 症状の観察: ホウ素欠乏の兆候がないか定期的に点検する。兆候が検出された場合は、速やかに対処する。
ホウ素欠乏により発育不全になった大豆の葉、ブラジル (写真提供 ICL)
ホウ素欠乏への対処法
早めの対策が深刻な問題を防ぎます。作物のホウ素欠乏を発見したら、すぐに対処して症状を緩和し、健全な生育を回復させることが望ましいです:
- 葉面散布:ホウ素を水に溶かし散布することで、土壌からの施用よりも植物へ早く吸収させられる。葉面散布は、急性の欠乏症に対処するのに特に効果的である。
- 土壌施用: ホウ素を含む粒状のNPK 肥料を施用し、圃場全体に均等に施用する。最良の結果を得るには、土壌の表層に施し、植物の根が肥料を利用しやすいようにする。
- 灌水:ホウ素は水に溶けやすい水溶性ホウ素肥料を用いれば、灌水を通じて植物に供給することもできる。
過剰なホウ素の施用は、カルシウムの吸収と利用を妨げ、 カルシウムの代謝とシグナル伝達を阻害する可能性があるので注意します。
柑橘における、ホウ素欠乏、ブラジル (写真提供: ICL)
どのICLの肥料がホウ素を供給できますか?
ホウ素を含む肥料は、作物のホウ素欠乏を防ぎ、植物の最適な生育を確保し、農業全体の生産性を高めるために不可欠です。ホウ素を供給できるICLの肥料には以下のようなものがあります:
葉面散布用肥料:
- Agroleaf® Liquid B10: 高品質な液状肥料で、10%(Bとして、B2O3として32.2%)の水溶性ホウ素を配合(国内取扱いなし)。この微量要素を吸収させることで、欠乏を予防し解消する。ICL独自技術 F3 SurfActiveによる高い展着性。
- Agroleaf®: 完全水溶性のNPKに微量要素のパッケージ、ホウ素も含む(国内取扱いなし)。
- Nutrivant: 完全水溶性のPKまたはNPKの処方群で、いくつかの処方にはホウ素を含む。Fertivant技術で、浸透性と持続性が高まる。
- Nova MKPlus: 0-51-34+Zn+Bの水溶性単肥。ホウ素と亜鉛を高純度の第一リン酸カリウムに組み込んだ複合結晶品。
灌水同時施肥用肥料:
ICLの水溶性配合肥料の多くには、灌水システムを通じ養分を供給する目的で、ホウ素とその他微量要素を配合しています。例えば以下の製品です:
- Agrolution® Liquid ME-6: この液状肥料には、高濃度のEDTAマンガン、鉄、亜鉛、銅とともにモリブデンとホウ素が含まれる。あらゆる作物の灌水同時施肥に最適で、欠乏を予防し解消する(国内取扱いなし)。
- Solinure®: 微量要素を含む水溶性NPK配合肥料で、ホウ素も含む。露地またはハウス土耕の果樹・野菜向け。
- Agrolution® Special: 微量要素を含む水溶性NPK配合肥料で、ホウ素も含む。その酸性化能で、作物に養分利用効率が高まる。
土壌施用のための粒状肥料:
- Agroblen® with V-Factor 8-20-7+3MgO+0.1B: 革新的な完全被覆の肥効調節型肥料で、苗木に8-9カ月間、完全な養分を供給する。苗木の定着に完璧な比率でNPKとマグネシウム・ホウ素を溶出する。養分に加え、V-Factor という有機の生育促進成分を含む(国内取扱いなし)。
- ICL PKpluS®: 造粒したPK肥料で、ポリサルフェイトをベースとする。リン、カリウム、硫黄、マグネシウム、カルシウムの5つの養分。テーラーメイドで、ホウ素などの他の養分を追加することもできる(国内取扱いなし)。
キャッサバのホウ素欠乏, インド (写真提供: Dr Susan John K, CTCRI, Kerala)
キャッサバのホウ素欠乏, インド (写真提供: Dr Susan John K, CTCRI, Kerala)
キャッサバのホウ素欠乏, インド (写真提供: Dr Susan John K, CTCRI, Kerala)
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