イチゴ
栽培の基礎知識
施肥、ベストプラクティス、該当製品、試験事例などについて知っておくべきこと
イチゴ栽培に関するアドバイス (Fragaria ananassa)
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イチゴは、pHが5.5から6.5の土壌で最もよく育つ。
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pHの高い土壌(7.5以上)では、主にリンの欠乏が、またその他の微量栄養素の欠乏も現れることがある。
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pHの低い(5.5未満)土壌では、リン、モリブデン、カルシウムの欠乏が現れることがある。
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有機物に富み、深い作土、肥沃な土壌でイチゴを栽培すると、最高の収量が得られる。
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イチゴの根の酸欠に弱く、この現象を避けるため、通常、ベッド(畝)に植えられる。
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14℃以下では、花の開花や品質に影響が出る可能性がある。
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高収量のイチゴ生産には灌水が不可欠。イチゴの根系は浅く、根は粘土質の土壌では15cmの深さまでで80~90%、水はけの良い砂質ロームの土壌では15cmの深さまでで50%となる。そのため、生産を最大化するには、頻繁に短時間の灌漑を行う必要がある。
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点滴灌水は、最もよく使用される方法。灌水量を正確に調整することができ、水溶性肥料を使用することで、養分の供給も可能になる。
栄養素の役割
窒素
収量増加を促進し、作物の栄養生長を確保する。
生育と収量に直接関与するタンパク質の合成において重要な役割を果たす。
リン
良好な根系の発達を促進する。開花の必須栄要素であり、果実の数と維持にも不可欠である。
植物の適切なエネルギー管理に不可欠である。細胞分裂を促進する。
カリウム
果実への糖分の輸送を促進する。 数十種類の酵素の補因子。 主に気孔の開口を通じて水分管理を調整する。
果実の糖度を高める。 多くの種類の非生物学的な、および生物学的なストレスに対する耐性を高める。 果実の深い色合い、しっかりとした果肉部、形状、全体的な収量性を改善する。
カルシウム
細胞壁の安定性を高め、植物に強固な構造と耐病性を与える。
適切なカルシウム供給は尻腐れを予防します。また、棚持ちを伸ばすのにも役立つ。
マグネシウム
クロロフィル分子の中心であり、光合成において重要な役割を果たす。鉄の利用を高める。
植物におけるリンの運搬を助ける。酵素を活性化し、多くの酵素の構成要素でもある。果実において濃緑色を出すのに役立ちます。
硫黄
タンパク質およびペプチドの構造成分。無機態窒素をタンパク質に変換する際に活性化。
さまざまな酵素の構造成分。クロロフィル生成の触媒。
鉄
タンパク質およびクロロフィルの合成に不可欠。多くの酵素において重要な要素であり、エネルギー伝達および呼吸系に関与。
マンガン
光合成において重要な役割:ヒル反応(H2Oの分解)、電子伝達、炭素同化。リボフラビン、アスコルビン酸、カロチンの生成。
ホウ素
糖および炭水化物の転流。受粉および種子生産。細胞分裂および細胞壁形成(カルシウムの吸収および利用に関連)。
養分欠乏症
窒素
栄養生長および果実生産の両方が著しく制限される。葉は薄緑色から黄色になる。若い葉は、古い葉から移動したた窒素によって、まだかなり緑色である。
収量は減少し、果実の色は薄くなり、短く、厚くなる。
リン
リン欠乏の植物は根が弱く、生育が阻害され、小さく、暗く、くすんだ灰緑色の葉が生じます。葉の縁が紫色から茶色になります(写真参照)。着果が減り、生産性が低下する。リン欠乏は、土壌のpHが低すぎる場合に最も多く発生する。
カリウム
古い葉が最も影響を受けやすく、葉の縁が焼け焦げたようになり、変色する。葉柄から小葉に伸びる部分が黒ずみ、他の小葉の付け根も壊死する。古い葉の鋸歯状の先端と縁が赤くなり、枯れていく。症状は徐々に葉脈の間を内側に向かって広がり、やがて葉身の大半が影響を受けるようになる。
カルシウム
最も若い葉は下向きに垂れ、葉の縁が焦げたようになる。 植物の先端部分の成長点および最も若い葉が萎縮し、枯死する。 深刻な欠乏状態では、葉の縁の黄化も起こる。 成熟した葉や古い葉は通常影響を受けない。 深刻な欠乏状態では、花が落ち、成長点が枯死し、ランナーや葉柄が黒ずんだ病斑を形成することがある。 果実は小さくなり、硬い質感になり、根の成長も低下する。 葉の先端が焼け(チップバーン)、しわが寄ることで、葉が歪んで厚くなるホウ素欠乏症と区別できる。
マグネシウム
主脈の間から始まる古い葉の黄化。深刻な状況では、黄色の領域に薄いベージュ色の焼けが生じます。若い葉はあまり影響を受けない。マグネシウム欠乏の植物から収穫された果実は色が薄く、その硬度が低下する。収穫量は減少する。欠乏は主に、高濃度の窒素または加里肥料が施された畑で現れる。
鉄
黄化は若い葉に最初に現れ、葉脈の間がはっきりと黄色くなる。他のすべての葉は濃い緑色のまま。深刻な欠乏状態では、細い葉脈も色あせ、特に強い日差しに晒された場合、葉がやがて焼けてしまうこともある。葉がほぼ完全に白くなるまでは、鉄分を与えると回復する。アルカリ性(pH > 7.0)または石灰質の土壌で生育している場合に最もよく見られ、石灰質土壌の過剰施肥、排水不良、土壌または養液中の金属イオン濃度(高EC)が高い場合にも発生する。
リン欠乏症
マグネシウム欠乏症
鉄欠乏症
塩素に対する耐性
イチゴは、塩分一般に対して最も耐性の低い作物のひとつであり、特に塩化物に対しては非常に敏感である。
塩素の影響を受けた葉は、乾燥して茶色がかった葉の縁、もろくなった葉、生育不良、根や植物が枯れる。
土壌溶液中の塩化物濃度の許容最大値は、ほとんどの場合5~7 meq/Lであり、品種によって多少異なる。灌漑用水中の塩化物濃度の許容最大値は3~5 meq/Lである。
植物の乾物中の塩化物が0.5%を超えると、塩化物の過剰症が見られる。
施肥方法
露地栽培および施設栽培における灌水同時施肥
この作物では点滴灌水が一般的であるため、施肥は通常、完全水溶性肥料を使用した灌水同時施肥によって行われ、作物の成長段階ごとのニーズに合わせてN-P-K-Ca-Mgの比率が調整される。
イチゴが要求する養水分は、土耕栽培において、以下によって満たされなければなりません。
- 灌漑用水に自然に含まれる要素
- 土壌にすでに存在する要素
- 土壌への追加投入する肥料
- 点滴灌水同時施肥による追加肥料
イチゴの養分要求量 = 土壌中の養分(例えば、ストックまたはミネラル化) + 水質 + 土壌に投入される肥料 + 栽培中の補完的養分(水溶性肥料)
葉面散布
これはイチゴの施肥では一般的な方法で、肥料を農薬と混合して使用する。 葉面散布は植物の成長を促進し、非生物学的な要因(乾燥、高温、冷たい土壌など)や生物的な要因(線虫、害虫、病気など)に対する耐性を高め、ミネラル不足を補う。
イチゴ用の肥効調節型肥料
作業負荷の軽減と生産性向上の必要性から、イチゴ栽培における CRF(肥効調節型肥料) の使用は急速に拡大している。例えば米国では、NPKの被覆肥料の使用が急速に広まり、現在ではカリフォルニア州を中心に全米で 26,000 ha以上のいちご畑の 55% 以上で使用されている。
通常、アグロブレンのような適切に設計されたCRFを植え付け前に1回施肥するだけで、作物のミネラル必要量の大部分を供給でき、1haあたり60トン前後の高品質な作物を収穫できる。 灌水同時施肥による水溶性肥料の追肥も一般的。
施設での養液栽培
オランダで大きな成功を収めているように、環境制御下での集中的な養分管理にイチゴは非常に良く反応する。
養液栽培に適した特定の処方の肥料が採用されている。
正確な施肥のアドバイスを行うには、品種特性と水質分析が必須。
養液栽培では、イチゴの養分要求を以下の方法で満たす必要がある。
- 灌漑用水に自然に含まれる成分
- 点滴灌水同時施肥による追肥量
イチゴの養分要求量 = 栽培に使う原水の水質 + 追肥(水溶性肥料)
施肥アドバイスを行うには、水質分析が不可欠。