作物の品質と棚持ちに対するカリウムの影響

カリウムによる農作物の官能特性の向上

4 分
Dr. Patricia Imas
農学コンテンツ・マネージャー&コモディティ肥料専門家

高品質の農作物を生産することは、あらゆる市況で高単価を実現するための重要な戦略であり、作物に十分なカリウムを供給することは品質を向上させる実証済みの方法です。作物生産における「品質要素」と呼ばれることもあるカリウムは、さまざまな品質特性の向上に不可欠な役割を果たしています。

官能特性

品質とは、作物生産において様々な側面を指しますが、この記事では作物の官能特性に焦点を当てています。官能とは、味、香り、見た目、感覚など、人間の五感で判断できるものを指します。多くの作物では、カリウムを適切に施用することでこれらすべての特性が改善されます。

生産者が品質向上のためにカリウムを使用する場合、ICLの高品質カリ肥料は最適です。ICLの専門的な農学・技術チームの支援により、当社の高品質塩化加里は、K2Oとして62%含有し、植物の生育に必要なカリウムを確実に供給します。

カリウムによる品質向上メカニズム

カリウムは、植物の代謝プロセス、特にタンパク質と糖の合成に不可欠な酵素を活性化するという、代替が不可能な役割を担っています。しかし、この生化学的機能には極少量のカリウムしか必要としません。多量のカリウムを必要とする理由は、植物の生物物理学的役割である、水分含有量を維持し、細胞の張力を維持するためです。細胞が膨張することで草勢が維持され、光合成が効率よく行われます。細胞内の水分と養分含有量の関係は、植物体内の両者の移動、および光合成によって生成された糖類が、穀物子実、塊根、塊茎、果実などの貯蔵器官へ輸送されるのを制御しています。これらの生理学的機能は、最高品質の作物を生産するために極めて重要です。

例えば、カリウムは果物や野菜の大きさや糖度を高め、風味や色を良くします。また、果実の形状が均一で大きくなり、色も鮮やかになるため、作物の魅力も増します。しかし、カリウムは作物の品質にとって不可欠であるだけでなく、作物の棚持ちを伸ばし、傷、斑点、機械的損傷、病気の兆候を抑えます。

Effect of potassium on citrus fruit size. Credit: A.R.O., Volcani Center, Israel

カリウムが柑橘類の果実の大きさに及ぼす影響 出典: A.R.O., Volcani Center, Israel

 

カリウムによる棚持ちの向上

カリウムが果物やその他の作物の保存期間をどのように改善するかを示す例は数多くあります。

  • 一般的に、カリウムは農作物の老化速度を低下させ、多くの生理的な病気の発生率を低下させる。
  • カリウムは果実硬度を高め、果皮を強めることで、輸送中のダメージを軽減し、腐敗を防ぎ、作物をより長く新鮮に保つ。
  • カリウムの施用量を増やすと、収穫した器官の重量が増加し、組織の完全性が維持されるため、収穫後の水分損失が減少する。
  • カリウムは、多大な損失をもたらす可能性のあるポストハーベスト病害の発生を抑えることができる。こうした病害による、果実、塊茎、塊根の損傷は、軽微であっても、販売前に廃棄しなければならない。
  • 貯蔵中、代謝プロセスにより糖分、でんぷん、有機酸が徐々に二酸化炭素と水に分解される。カリウムが不足すると、この分解速度が速まるため、貯蔵中の果物は長持ちしない。

カリウムによる作物の品質向上

バナナ、トマト、ばれいしょ、たまねぎ、その他多くの作物において、カリウムが作物の貯蔵性と出荷品の質を高めることにより、品質におけるカリウムの重要性ははっきりとしています。

  • バナナのカリウム栄養状態が悪いと、房が薄くもろくなり、保存期間が短くなる。
  • 貯蔵中の柑橘類の品質は、樹木のカリウム栄養状態に影響される。カリウムの施用量が増加すると、軸腐病とカンキツ緑かび病の発生率が減少し、輸送中の果実の損失が減り、スーパーでの貯蔵期間が長くなる。
  • オレンジ品種のシャムーティの場合、カリウムは、収穫後3~5週間以内に集出荷場で発生する生理的病害である果皮障害「こはん症」の発生率を低下させる。
  • ばれいしょでは、カリウムを施用することで、カタラーゼ酵素とペルオキシダーゼ酵素の活性低下によって起こる貯蔵ロスが減少する。
  • にんじんでは、カリウム施用により収穫後の保存性が高まる。
  • カリウムの施用量を増やすと、パイナップルの収穫後の最も重大な生理学的障害の 1 つである腐敗病の発生率が減少する。

パパイヤにおいては、果実の収量を増加させるだけではありません。インドでの試験で、カリウムの施用量を増やすとパパイヤの3つの主要な品質パラメータも改善されることが分かりました。カリウムは果実の可食部の厚さ(果肉の厚さ)を増加させ、果実の甘み(全可溶性固形物量であるTSSとして測定)を増加させ、果実の酸度を低下させました。

Effect of K application on papaya fruit yield and quality. Source: IPI (International Potash Institute)

パパイヤの果実の収量と品質に対するカリウム施肥の効果 出典:IPI (International Potash Institute)

 

最適なカリウム施用量

個々の作物のニーズと、異なる品質特性が市場価格に与える影響を理解することは、最適なカリウム施用量を決定する上で重要になります。多くの場合、最適な作物収量を達成するために必要なカリウムの量は、優良品質を確保するのにも十分な量です。 しかし、収量よりも品質の向上がより重要となる状況、例えば果物生産の場合には、作物のカリウムの必要量に注意を払うことが不可欠です。カリウムの施用量を増やし、作物の味、見た目、大きさ、棚持ちを改善することで、全体的な経済的利益を向上させることができます。